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本研究は、科研費による研究と連動させつつ、インドネシアのバリ島、および国内の沖縄周辺地域の島嶼社会を事例とした、「楽園」という形容を与えられる観光地に関する、島嶼学と人類学とを架橋させた中長期的な研究の一環である。
本研究は、文献研究にもとづく理論研究と、フィールドワークにおもにもとづく民族誌的研究とからなる。文献研究の面では、沖縄やバリの伝統的な文化・宗教と観光という経済現象との論理的関係をあらためて考察するために、マックス・ウェーバーの経済と宗教をめぐる議論を再整理し、これをモダニティをめぐる現代社会理論と再接続させる議論を目指した。現段階では、その接続にリスク社会論がきわめて重要な位置を占めるという暫定的な結論に達している。また、ヴェーバーの議論の主要なところ、観光論と現代社会理論との関係性といった論点を、整理しつつある。フィールドワークの面では、これまで継続的な調査をおこなっているバリ島ウブドと沖縄の粟国島・八重山地方において、あらたなデータ収集をおこなった。ただし、沖縄については、台風等の影響もあって、かならずしも調査は順調に進まなかった。調査地の再選定も、今後の課題である。
研究費は、例年であれば資料収集のための旅費にもっぱらあてるのだが、今年度はこれを科研費によりまかなうことができたので、若干の図書の購入と、資料整理作業にもちいた。後者は、手元(研究室)にある文献資料を整理・分類し、研究上のデータとして再資源化する作業のための、アルバイト雇用費である。研究室の書庫がいっぱいになっていたための措置であったが、これは研究の合理的な運営にも有益だった。文献資料のPDF化は、全体資料の4割程度まで進んだ。
研究成果は、単著の出版という形式にておこなった。次年度も、今年度の研究を継続・発展させるという観点から、パッヘ研究奨励金を申請し、今年度後半における研究の成果とあわせて発表の機会を探り、この中長期的な研究の進展をはかりたいと考えている。
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