2013年度 パッヘ研究奨励金T-A-2(特定研究助成・一般)研究成果報告書

氏名 斎藤 衛 所属 人文学部人類文化学科
研究課題 日本語における複合動詞と文法格の類型論的特徴に関する理論的研究
研究実績の概要
 日本語文法の類型的特徴を説明するパラメターの研究を継続して遂行し、以下の研究成果を得た。
(1) 複合動詞の派生
 類型的に際立った特徴を有する日本語の語彙的複合動詞をとりあげて、中国語複合動詞、エド語連鎖動詞との比較において分析を提示し、日本語の基本的な特徴の一つが二動詞の統語的併合による複合動詞形成を許容することにあるとの結論を得た。この成果は、6月4日〜5日に台湾・国立清華大学にて開催されたThe 8th International Workshop on Theoretical East Asian Linguisticsにおける招待研究発表として公表した。(同ワークショップの論文集は、オックスフォード大学出版会から刊行される予定。)
(2) 文法格の役割と認可
 人称一致の欠如を日本語文法の根本的特徴とする仮説に立って、日本語文法格の新たな分析を提示した。さらに、人称一致の欠如から、項削除現象、多重文法格現象、文法格交替現象、自由語順、語彙的複合動詞の性質など、日本語文法のさまざまな特徴を導くことができることを示した。この成果は、「日本語文法を特徴付けるパラメター再考」と題する論文として、国立国語研究所共同研究プロジェクト『言語の普遍性及び多様性を司る生得的制約』(リーダー:村杉恵子) の成果報告書 (9月) に掲載し、また、慶応義塾大学言語文化研究所コロキアム (10月5日〜6日) および日本英語学会第31回大会ワークショップ (11月9日、福岡大学) において発表した。
(3) 演算子-変項関係の形成
 上記の研究に含まれない日本語の主要な特徴に、wh疑問文の性質がある。日本語の疑問詞 (「だれ、なに」等) については、疑問の演算子とする分析 (Huang 1982) と変項とする分析 (Kuroda 1965) があった。本研究では、まず、英語、中国語との比較を通して、この二つの仮説の問題点を指摘した。その上で、共起する小辞 (「か、も」等) により、疑問詞が疑問の演算子、全称数量詞、存在数量詞など、さまざまな解釈を受けること、疑問詞と小辞の間に局所性がみられることに鑑み、疑問詞を、小辞により意味内容を与値される中立的な演算子として分析することを提案した。この成果は、台湾中央研究院語言學研究所における講演 (3月14日) として発表した。また、その一部は、次ページに示す論文 “Japanese Wh-Phrases as Unvalued Operators” として公刊する。
「雑誌」の部 「図書」の部
@ 論文題目   @ 書名 Studies in Japanese and Korean Linguistics and Beyond
雑誌名   論文名 Japanese Wh-Phrases as Unvalued Operators
巻号   出版社 Global Oriental/Brill, Leiden
発行年月   出版年月 2014年6月 (予定)
ページ   ページ 未定
著者名   著者名 Mamoru Saito
備考   備考  
A 論文題目   A 書名  
雑誌名   論文名  
巻号   出版社  
発行年月   出版年月  
ページ   ページ  
著者名   著者名  
備考   備考  
B 論文題目   B 書名  
雑誌名   論文名  
巻号   出版社  
発行年月   出版年月  
ページ   ページ  
著者名   著者名  
備考   備考