2013年度 パッヘ研究奨励金T-A-2(特定研究助成・一般)研究成果報告書

氏名 青柳 宏 所属 人文学部人類文化学科
研究課題 日本語、韓国語、中国語の複合動詞の比較対照研究
研究実績の概要
 東アジア3言語の機能範疇の働きを追究するために、前年度から複合動詞に焦点を当てて研究を進めてきた。前年度は主に日本語と中国語を取扱い、今年度は日本語と韓国語を比較・検討した。
 従来、日本語の複合述語には語彙的なものと統語的なものの二種類が存在するといわれてきた(影山1993、1996、松本1998、由本2006など)。しかし、分散形態論(Halle & Marantz 1993, Marantz 1997, 2001など)の見方に立てば、すべての語は統語的に生成され、従来の二項対立はもはや成立しない。したがって、この見方で日本語における「語彙的」な複合動詞と「統語的」なそれとがどう区別されるべきか、さらに、韓国語の生産的な複合動詞とどう違っているかが検討課題となる。
・日本語の「語彙的」な複合動詞については、影山(1993)以来「他動性調和原則」に従うとされてきた。しかし、いわゆる「語彙的」な複合動詞においては、語根(root)同士が併合はするがラベリング(labeling)は行われず([? √1+√2])、その後範疇を決定する動詞化素vが併合し、vが述語の他動性を決定するVoiceと一致(Agree)する([Voi [v [? √1+√2] v[? tr] Voi[? tr]]]])との分析を提案した。ここで、√1と√2のいずれもがvから可視であるため、PF(音韻形態部門)において両者は他動性に関して一致せざるをえない。この分析が正しければ、「他動性調和原則」は複合動詞形成にかかる文法の根本原理ではなく、提案した分析の帰結にすぎないことになる。
・一方韓国語においても、「語彙的」な複合動詞と「統語的」なものの二種類が存在するとの見方が有力であった(Kim 1993、Choi 2004、和田2012など)が、最近Ko & Sohn(2011)が従来「語彙的」とされてきたものも統語部門で形成されるとの見方を示している。そこで、Ko & Sohnが挙げた3つの根拠以外に助詞の挿入、述語反復の証拠を挙げ、彼らの見方を支持した。韓国語の複合動詞では、日本語のように語根同士の併合したものは希で、より生産的なものは、結合母音-eの存在が示すように、語根に動詞化素が併合したもの同士がさらに併合したもの([?/v2 [v1 √1+v1]+[v2 √2+v2]])である。日本語の「語彙的」複合動詞の分析を応用し、Ko & Sohnが提案したHigh-SVとLow-SVの違いは、v1とv2の併合時にラベリングが起こるか否かで区別できることを示した。
 以上の研究成果は、the 115th Seoul International Conference on Generative Grammar(於韓国外国語大学、2013年8月9日)で口頭発表するとともに、次項「雑誌の部」@の論文に発表した。
「雑誌」の部 「図書」の部
@ 論文題目 "On Verb Serialization in Japanese and Korean" @ 書名  
雑誌名 Universals and Parameters: Proceedings of the 15th Seoul International Conference on Generative Grammar (Hankuk Publishing) 論文名  
巻号 Vol.15 出版社  
発行年月 2013年 8月 出版年月  
ページ 43-55 ページ  
著者名 Hiroshi Aoyagi 著者名  
備考 既刊 備考  
A 論文題目   A 書名  
雑誌名   論文名  
巻号   出版社  
発行年月   出版年月  
ページ   ページ  
著者名   著者名  
備考   備考  
B 論文題目   B 書名  
雑誌名   論文名  
巻号   出版社  
発行年月   出版年月  
ページ   ページ  
著者名   著者名  
備考   備考