2013年度 パッヘ研究奨励金T-A-2(特定研究助成・一般)研究成果報告書

氏名 楠本 和彦 所属 人文学部心理人間学科
研究課題 箱庭制作者の主観的体験に関する質的研究
研究実績の概要
 研究課題に関して、研究を行い、以下の2論文を公刊した。それぞれの研究結果の概要について、記載する。
1) 「M-GTAを用いた箱庭制作面接における連続性に関する促進機能についての検討」
 本研究は,継続的な箱庭制作面接における箱庭制作者の主観的体験のデータを基に,面接の連続性に関する促進機能の理論生成を目的とした。
 二人の調査参加者の継続的な箱庭制作面接のデータを修正版グランウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA) を用いて分析した。その分析結果の内, 本稿の目的を達成するため,コアカテゴリーJ【単一回の制作過程・作品と作品の連続性や変化の交流】とコアカテゴリーK【箱庭制作面接のプロセスと心や生き方の変化・成長の交流】内の6概念について,検討した。検討の結果,連続性の促進機能が確認された。箱庭制作面接の連続性により,箱庭作品,箱庭制作者の心や生き方に変化が生まれ,箱庭制作者の自己理解・自己実現・自己成長が促進されることが見出された。また,箱庭制作面接の連続性が,箱庭制作者のイメージ体験(自律性,集約性,象徴性など)を促進することが見出された。概念[面接内外を貫いて内的プロセスを生きる]に示されるような態度は,箱庭制作者自身がコンステレーションに気づき,それを読み,意味を与えることができるようになる一要因となる,と考えられた。また,本概念は,面接内外のプロセスの交流により生起した連続性とみることができた。本概念に示されるような態度によって, 面接内外のプロセスが連動・総合されて,面接内外を貫く連続性が生まれる,と考えられた。
2) 「箱庭制作者の主観的体験に対する系列的理解を中心とした質的研究」
 本研究は,継続的な箱庭制作面接における箱庭制作者の主観的体験のデータを基に,箱庭制作者の主観的体験の変容や面接の展開,その個人的意味を検討することを目的とした。
 二人の調査参加者の継続的な箱庭制作面接における主観的体験について,調査者が設定したテーマに沿って,系列的理解を実施した。B氏のデータを,「宗教性を中心とした心や生き方の変容」の観点から検討した。この検討は(1)宗教性・信仰,(2)心の多層性,の観点からなされた。A氏のデータを,「自己の多様性と能動性の獲得,他者との関係性の変容」の観点から検討し,多様性や能動性の獲得,他者との関係性の変容が,連鎖的に生じていったことが確認された。
 両氏の箱庭制作面接への系列的理解によって,両氏への個別的理解を深めることができた。同時に,系列的理解によって,継続的な箱庭制作面接の連続性が,促進機能をもち,箱庭制作者の自己理解・自己実現・自己成長の促進に寄与することを示すことができた。
「雑誌」の部 「図書」の部
@ 論文題目 M-GTAを用いた箱庭制作面接における連続性に関する促進機能についての検討 @ 書名  
雑誌名 人間関係研究 論文名  
巻号 第13号 出版社  
発行年月 2014年3月25日 出版年月
ページ pp.71-101 ページ  
著者名 楠本和彦 著者名
備考   備考  
A 論文題目 箱庭制作者の主観的体験に対する系列的理解を中心とした質的研究 A 書名  
雑誌名 人間関係研究 論文名  
巻号 第13号 出版社  
発行年月 2014年3月25日 出版年月  
ページ pp. 102-138 ページ  
著者名 楠本和彦 著者名  
備考   備考  
B 論文題目   B 書名  
雑誌名   論文名  
巻号   出版社  
発行年月   出版年月  
ページ   ページ  
著者名   著者名  
備考   備考