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申請時の計画では、金融商品販売業者による顧客情報の収集実態を把握することを目的としていた。ただし、インタビュー形式により業者間の比較等を行うには、同一条件で同一の質問を確保することが必要となり、店舗間の職員レベルの格差問題等もあり、研究方法を変更した。
変更後は、FINMAC(特定非営利活動法人証券・金融商品あっせん相談センター)が公表している紛争解決手続事例(テキスト・データ)を議論のベースに紛争解決手続の現状を明らかにするとともに、その紛争原因を説明義務や適合性原則に絞り込んだ上で投資家(申立人)および金融商品取引業者(被申立人)の主張を参考に、事前の紛争予防措置を講ずることの必要性を検討した。
使用したテキスト・データ(数値データも含まれる)は、FINMACが公表している紛争解決手続(あっせん)の実施状況(四半期毎)を使用している。具体的には、指定紛争解決機関業務(特定第1種金融商品取引業務)に限定している。期間は平成23年度第1四半期から平成25年度第3四半期までの11四半期である。サンプルは公表されている482件である。そのうち、385件(構成比79.9%)が「勧誘に関する紛争」である。さらに、その内訳である「説明義務違反」と「適合性の原則」はそれぞれ225件(構成比%)、97件(構成比%)となっている。
これらの分析においては、全サンプルから売買取引に関する紛争、事務処理に関する紛争およびその他の紛争を除外した「勧誘に関する紛争」に限定して行う。サンプルを限定する目的は、全体の8割を占める勧誘という金融商品取引の「入り口」に関する紛争に重点を置くことで、紛争の予防策を検討する上でも有用だからである。 提示した主な対応策としては、
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金融商品取引業者における営業担当者の業務・商品知識と倫理教育の徹底 |
A |
金融商品取引業者の内部監査体制の強化 |
B |
金融商品取引業者・顧客双方での適合性評価項目の共有化 |
C |
顧客への重要事項の説明の音声・動画等での記録保存の義務付け
これら対応策により、金融商品取引業者が金融商品の販売・勧誘における入口でのトラブルの発生抑制に貢献することを期待している。
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