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【研究経過】 |
本研究は、次の過程により実施した。
まず、実務家との研究会や学会発表などにおいて、現代の信託商品に関する課題について聴き取り等を通じ、現在の信託実務および信託の利用促進について、調査を実施し、問題の洗い出しを実施した。
次に、信託法の根幹である受認者義務について、信託の発祥に遡り、その歴史的経緯について、イギリス・アメリカの文献をもとに、調査を行った。
以上の基礎調査を踏まえ、近年大きな社会問題となった企業年金の運用における受託者責任について、アメリカの規制(エリサ法、信託法)を中心に、調査し、実質的に信託を支配する者が存する信託における受託者の責任はどうあるべきかを検討した。
なお、本研究の成果の一部については、信託協会で行われた実務家向けのセミナーで、公表した。 |
【研究結果】 |
研究結果については、「指図権者の指図を受けて信託事務を遂行する受託者の責任―アメリカにおける企業年金信託の受託者責任」という題目で、論文としてまとめ、南山法学37巻3・4号合併号に掲載予定である。
信託の機能が財産権の移転手段から財産管理へと変化するなか、受認者義務が生み出された。この機能の変化の原因は、受託者の裁量権の拡大である。この歴史的経緯を鑑みれば、受認者義務が課される要件・要素は、裁量権の存在であるといえる。
ところで、現代型信託における受託者は、管理対象の財産(信託財産)の名義人ではあるが、実質的支配は受託者以外の第三者に存する場合がある。すなわち、受託者には、裁量権がないといえる。このような信託において、受託者は、受認者義務を負うかが、アメリカにおいて、特に資産運用の信託において、大きな議論がある。
本研究では、このアメリカでの議論を参考に、我が国の信託で、実質的支配権が受託者に存しない場合の受託者責任がどのようにあるべきか(実質的支配権者とどのように権利・義務を調整すべきか)について、一つの解決策を提案するものである。
なお、この研究成果については、上記雑誌にて公刊するとともに、3月に実施予定のシンポジュームで、この一部を公表する。
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