2013年度 パッヘ研究奨励金T-A-2(特定研究助成・一般)研究成果報告書

氏名 寳多 康弘 所属 総合政策学部総合政策学科
研究課題 開放経済におけるセクター別の環境規制と排出量取引
研究実績の概要
 新興国の経済成長による温暖化ガスの排出量増加の中、地球規模での温暖化ガスの削減は急務である。新興国の排出ガスの比率が高まり続けており、先進国主導の排出削減では追いつかない状況である。そこで、先進国だけでなく途上国においても、経済的手法の活用で効率的な削減が求められており、中でも炭素税や排出量取引制度の導入の重要性が指摘されている。これによって、排出量削減(限界)費用の均等化が実現できる。

 しかし、現状では、先進国を含めて各国は排出を一律に規制していない。例えば、EU(欧州共同体)での排出量取引市場であるEU ETSのフェーズ3(2013年〜2020年)で、フェーズ2からカバー率(規制対象の比率)は若干増加したものの、それでも5割弱に過ぎない。先進国内においてですら、一律に規制されていない排出源が多い。途上国では排出量取引を実施していたとしてもさらに限定的である。最終的に、各国は排出源に対して一律の規制を行うつもりであるが、まだそのようにはなっていない。

 このような現状の中、将来的に一律規制を導入して効率的に排出を削減することが望まれている。つまり、産業(セクター)ごとに異なる環境規制を行っている状況下で、一律規制が導入されることとなる。セクター別規制の下での一律規制は、産業構造を変化させるので、産業間の相互作用を考慮した一般均衡分析によって、評価することが不可欠である。また、貿易集約度の高い産業に配慮した環境政策が多いので、それを考慮に入れた分析が必要である。そこで、明確な結果を得るために小国開放モデルでの分析に集中した。

 本研究で明らかになったことは以下の通りである。まず国・地域で環境規制の水準が産業・業種間で異なる現状を概観して、国による政策の特徴を明らかにした。その後、排出量取引市場の創設の影響を小国開放の一般均衡モデルで分析した。輸入関税が存在すると、排出量取引の導入によって、導入前のセクター別規制と輸入関税率の大小関係次第では、経済厚生が悪化するかもしれないことを示した。厚生が悪化・改善する条件を導出して解釈した。政策的インプリケーションとして、排出量取引制度の導入と貿易自由化は同時に進めるべきであるといえる。

 上記の研究成果は図書として出版した。その内容を発展させたものを、海外の学術雑誌に投稿して公表すべく、海外学会での報告や研究動向調査を参考に改善に努めている。
「雑誌」の部 「図書」の部
@ 論文題目   @ 書名 環境・エネルギー・資源戦略
雑誌名   論文名 環境規制対象産業の拡大の経済的影響
巻号   出版社 日本評論社
発行年月   出版年月 2013年9月
ページ   ページ pp.71-88
著者名   著者名 沖本まどか、寳多康弘、津布久将史
備考   備考  
A 論文題目   A 書名  
雑誌名   論文名  
巻号   出版社  
発行年月   出版年月  
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著者名   著者名  
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B 論文題目   B 書名  
雑誌名   論文名  
巻号   出版社  
発行年月   出版年月  
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著者名   著者名  
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