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当初の研究計画では震災後の街づくりに関する住民の意識調査を行うことで、災害に強い街づくりへの提言を行うことを目指していたが、パッへ研究奨励金を用いて2013年10月に実施したインターネット調査で得られたデータを用いた分析において、サンプル数の関係で統計的に有意な結果が得られない、という状況に陥った。そこで、前年から別研究で実施をしていたエコカーに関する研究の分析結果の考察の材料として当該調査のデータを使用し、震災後のまちづくりに資するために活用させていただくこととした。具体的には、電気自動車を蓄電池として使用することに対する人々の需要に関する考察の妥当性を確認するために当該データを用いた。
現在、震災時における緊急電源として電気自動車を蓄電池として用いるという考えかたが広まりつつあるが、実際に消費者が緊急電源の用途で電気自動車を購入したいと考えているのかどうかについては現状、実証的な調査が行われていない状況であり、検証を行うことには一定の学術的意味があると考えている。分析の結果、震災時の非常用電源としての機能は統計的に有意に電気自動車購入を促進させるという結果が得られた。一方で、蓄電池に対する平均支払意思額は一人当たり3万円程度であり、蓄電池単体での購入は難しいこともデータより分かった。一般家庭において蓄電池単体での購入が進まない現状にあっては、電気自動車が震災時の蓄電池として果たす役割は大きいと考えられるが、今回の研究で蓄電池としての用途が電気自動車の購入意識を高めることが検証されたことは今後の電気自動車の普及政策に有益な示唆を与えるものであると考えられる。
今後の課題としては現状、電気自動車の普及台数が少ないため、購入経験者が少なく、購入決定の要因分析が難しいこと、そのために購入意欲に関する分析にとどまっていること、が挙げられる。電気自動車の普及がある程度進んだ段階で購入決定のモデルの分析をすることが必要と考えている。以上の研究成果は南山経済研究の第28巻第3号にて報告を行っている。
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