2013年度 パッヘ研究奨励金T-A-2(特定研究助成・一般)研究成果報告書

氏名 三輪 まどか 所属 総合政策学部総合政策学科
研究課題 高齢者の自己決定と家族・高齢者の代弁者としての専門職のあり方に関する研究
研究実績の概要
 
 本研究は、高齢者の自己決定のあり方とその家族との関係、そして専門職のあり方に関する研究として、私が現在関わっている2つの裁判(大分・神戸)への参画と文献研究を主眼として実施された。
 上記裁判のうち、大分の裁判については上告がなされたものの最高裁での進展がなく、また意見書等を書く機会に恵まれなかった。しかし、神戸の裁判については、2つの請求(専門家に対する損害賠償請求および、遺言無効訴訟)において、それぞれ意見書を提出し、特に後者についての論文を仕上げることができた【雑誌@】。この論文は、従来学会内でもあまり取り上げてこられなかった、裁判例における高齢者の意思能力の判定基準について纏めたものであり、特に実務家にとって有用であるように思われる。ただし、裁判の進行がそれほど順調ではなかったため、裁判傍聴へ行くことは叶わなかった。
 また、そもそもの目的としていた「より意思能力の低下した高齢者本人と家族の問題を整理するとともに、高齢者と家族の関わりを紐解く」という内容について、本研究計画提出後開催されることを知った日本学術会議第7回基礎法学シンポジウム「親密圏と家族」に参加し、近年、家族に代わる概念として使われる「親密圏」について学んだ。次に、意思能力が低下した高齢者と家族との関わりについて、現状、家族の中に「介護をする者」と介護に全く関わることのできない「よそ者」が生ずることを明らかにする論文を執筆した【図書@】。この論文の執筆課程において、8月と12月に2度、執筆者会議および研究会を実施した。この研究会の参加によって、当該論文の論点について、より明確になった。本論文は、近年の、特に財産を有する、意思能力の低下した高齢者をめぐる家族・親族・第三者間をめぐる争いを中心に分析し、前述のように、任意後見契約の締結や遺言の存在が、その家族に「介護をする」「よそ者にする」という役割を与えてしまっていること、高齢者の自己決定が、家族の役割を固定化する可能性があることを踏まえた上で、今後、高齢者が自分らしい老い(最期)を迎えることと、家族との関わりをどう考えるべきかについて、(あり方について解決はせずとも)一定の方向性を導けたのではないかと思う。
 まだまだ研究途中ではあるが、今年度も私の研究にご支援いただいたことに感謝し、さらなる深化を進めていきたいと思う。
 
「雑誌」の部 「図書」の部
@ 論文題目 「高齢者の意思能力の有無・程度の判定基準ー遺言能力、任意後見契約締結能力をめぐる裁判例を素材としてー」 @ 書名 『家族と社会保障をめぐる法的問題ー本澤巳代子先生還暦記念論文集ー』
雑誌名 横浜法学 論文名 「よそ者にされる家族ーー任意後見における『本人の意思の尊重』の再考試論」
巻号 22巻3号(奥山恭子教授退官記念号) 出版社 信山社
発行年月 2014年3月予定 出版年月 2014年1月予定
ページ   ページ  
著者名 三輪まどか 著者名 三輪まどか
備考 2014年3月頃予定 備考 2014年3月頃予定
A 論文題目   A 書名  
雑誌名   論文名  
巻号   出版社  
発行年月   出版年月  
ページ   ページ  
著者名   著者名  
備考   備考  
B 論文題目   B 書名  
雑誌名   論文名  
巻号   出版社  
発行年月   出版年月  
ページ   ページ  
著者名   著者名  
備考   備考