2013年度 パッヘ研究奨励金T-A-2(特定研究助成・一般)研究成果報告書

氏名 森泉 哲 所属 短期大学部英語科
研究課題 ソーシャルサポート要請と対人コミュニケーション能力との関連:日米比較
研究実績の概要
 
 本研究では、対人コミュニケーション様式のうち、ソーシャルサポート要請をとりあげ、その場面と対人コミュニケーション能力との関連を日米比較研究することを研究目的とした。日米の対人行動の文化差は指摘されながらも、なぜその文化差が生じているのか十分に解明されていなかったため、「他者とコミュニケーションを円滑に、かつ適切に行える能力」と定義される対人コミュニケーション能力の概念を援用して、サポート要請の程度・方法の文化差に対してコミュニケーション能力の関連から文化差の理由を解明することを試みた。
 研究データとしては、すでに日米大学生約500名に対して収集済みのデータを当該項目に関して再分析をする形で行い、以下の結果を得た。まず研究1では、日本人大学生のみを対象として、ソーシャルサポート要請項目を含むCarver (1997)の作成したBrief COPE尺度を使用して、その使用程度について測定した。さらに関係満足感との関連について検討した。その結果、使用程度の最も高いものは「受容」であり、次に問題焦点型コーピングとされる「積極的コーピング」「計画」等であった。使用頻度が高いスタイルと円滑性・適切性には正の相関がみられ、対人関係上効果的であるコーピングが使用されている様子がうかがえた。
 研究2では、アメリカ人大学生データと日米文化差について検討した。その結果、日米の大学生を対象に、コーピングスタイルの使用程度、ならびにそれらの使用の関係満足感への影響について検討した。その結果、両文化共に「受容」が最も使用されていたが、米国は「計画」「積極的コーピング」「道具的サポート」「情緒的サポート」をより使用していた。関係満足感との関連については、日本では「積極的コーピング」と正の関連が示され、米国では「積極的コーピング」「受容」「道具的サポート」と正の関連が示されてはいたが、多母集団同時分析によりパスに等値制約を課した結果、両国の差はないことが明らかとなり、文化差は限定的であることが示唆された。
 研究3では、ソーシャルサポート要請を求める相手と家族コミュニケーションパターンとの関連について日米比較を行った。その結果、家族コミュニケーションを積極的に行う者は、よりソーシャルサポートを求める傾向が高かかった。その程度は、家族、友人、外集団という順番で、求める傾向があることが見出され、家族コミュニケーションのあり方が対人行動一般に影響を及ぼしている様子がうかがえた。以上のことから、日米間の大きな文化差というよりも、家族コミュニケーションや関係性の観点から、対人行動が行われているのではないかと推測される。
 
「雑誌」の部 「図書」の部
@ 論文題目 コーピングスタイルおよびその評価と関係満足感との関連 @ 書名  
雑誌名 日本心理学会第77回大会発表論文集 論文名  
巻号   出版社  
発行年月 2013年9月 出版年月  
ページ 223 ページ  
著者名 森泉 哲 著者名  
備考   備考  
A 論文題目 コーピングスタイルと関係満足感との関連―日米比較― A 書名  
雑誌名 日本社会心理学会第54回大会発表論文集 論文名  
巻号   出版社  
発行年月 2013年11月 出版年月  
ページ 205 ページ  
著者名 森泉 哲 著者名  
備考   備考  
B 論文題目 Are Family Communication Patterns Transferable to Interpersonal Interactions? Social Support Seeking in Japan and the United States B 書名  
雑誌名 85th Annual Convention of Western States Communication Association 論文名  
巻号   出版社  
発行年月 2014年2月 出版年月  
ページ   ページ  
著者名 Satoshi Moriizumi 著者名  
備考   備考