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本研究は、今日の学校教育の大きな課題である「学校の危機管理」と「スクールリーダーシップの在り方」について、相互に関連させて考察したものである。スクールリーダー(校長、副校長、教頭、主幹、指導教諭、教務主任等の各主任)のリーダーシップの在り方に関して、スクールリーダーや一般の教員がどのようにとらえているかを調べるために、無記名の質問紙調査を行った。French & Ravenのパワー理論及び岩田(2012)、浅井(2013)の実践を参照しつつ、筆者のスクールリーダーとしての経験知による観点を加えて、14の質問項目を選定した。これらの質問項目について、「1. 全くそう思わない」〜「5. とてもそう思う」の5段階による回答を求めた。また、関連して意見等があれば自由に記述できるようにした。
その結果の一つとして、「リーダーに人間的魅力を感じて尊敬し、『あの人のようになりたい』と思わせる準拠パワー」についての回答は、「少しそう思う」及び「とてもそう思う」と回答した者の合計が、全体の約93%に達し、高い肯定的支持を得た。その一方で、「命令を発し、従わなければ罰を与える強制パワー」については、スクールリーダーに必要な力(パワー)として、「全くそう思わない」「あまりそう思わない」の合計が64%であり、否定的にとらえる傾向が見られた。このような教員集団の特性を的確に捉えて危機管理に対応する必要があることが分かった。
東北大震災に伴う津波により、校長不在の大川小学校は壊滅的な被害を受けた。緊急時に校長が不在であることは、十分にあり得ることである。巨大地震では、停電や携帯電話基地局の損壊等により、通信手段も奪われてしまう。したがって、校長の指示・命令のみに頼り切っている組織は、脆弱となる。たとえピラミッド型統制組織が確立していたとしても、それが機能しないような危機のただ中にあっては、スクールリーダー一人一人がウェブの中心として自主的に判断し行動できるような組織に成長させる必要があることを釜石市立小学校との対比において示すことができた。
大津市のいじめ事件では、資料の分析から、校長をはじめとするスクールリーダーが積極的かつ具体的な行動を起こした形跡が認められず、学校がいかなる形態の組織としても機能していなかったことを指摘した。また、いじめ事件の背景として、学校の規律の崩壊があることを他の事例との対比において示した。21世紀のスクールリーダーは、ウェブ型組織のマネジャーとしての役割も必要であることを示した。
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