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カトリック文庫講座「ローマの地下世界に魅せられた研究者たち:死者に捧げられた地下都市カタコンベと初期キリスト教」
2019年12月13日
12月7日(土)南山大学人類学博物館にて、カトリック文庫講座を開催しました。講師の西南学院大学准教授 山田順氏は1993年に南山大学大学院を修了後、ローマの教皇庁考古学研究所大学院で学ばれました。
専門はイタリアの初期キリスト教考古学で、現在も初期キリスト教礼拝施設(オラトリオ)の発掘調査のためローマにご滞在中のところ、この講座のために帰国してくださいました。
ローマの地下には50余りのカタコンベ(地下共同墓地)がひろがり、今なお水道工事や建設工事の際に、新たなカタコンベが姿を現すといいます。2世紀後半、度重なる迫害のなか、キリスト教の共同体が貧しい信徒の埋葬場所を確保するために、縦横に、また地下深くひろがっていったカタコンベ。
313年のコンスタンティヌス帝のミラノ勅令によって「教会の平和」が実現されると、迫害期に英雄的死をとげた殉教者に対する熱い信仰によって、カタコンベは多くの信者が目指す重要な巡礼地になりました。そして5世紀のゲルマン部族によるローマ略奪により多くのカタコンベが破壊され、殉教者の遺骸が城壁内の聖堂に移されるとカタコンベは人々の記憶から完全に失われてしまいます。
今回は、講座にあわせて、人類学博物館にカタコンベの世界に魅了された研究者たちの研究成果が展示されました。神言神学院図書館(教皇庁認可神学部図書館)が所蔵する16世紀のアントニオ・ボージオの貴重書『Roma Sotterranea(ローマの地下世界)』や山田順氏が作成された野帳(フィールドノート)などです。このことには、貴重な知的財産を介した学内外関係機関のよき連携事業としての意義をも見出しています。
そして講師の興味深いお話と最新のローマの地下の3Dデジタル画像に引き込まれ、地下にある人類学博物館がまるで古代ローマの地下世界のように感じられる一日となりました。