図書館について 活動紹介
推薦図書トーク2024 第5回(5月13日開催)
2024年05月13日
外国語学部 フランス学科 真野 倫平 先生
『アクロイドを殺したのは誰か』
南山大学ライネルス中央図書館では、NANTO ルームにて「推薦図書トーク(全17回シリーズ)」を開催しています。各学科の先生方から学生の皆さん宛に本を推薦していただき、
その本の魅力や背景について直接語っていただく企画です。
第5回は、外国語学部 フランス学科の 真野 倫平 先生に推薦図書をご紹介いただきました。
真野先生の推薦図書は、ピエール・バイヤール 著『アクロイドを殺したのはだれか』です。
本書は、アガサ・クリスティによる著名な推理小説『アクロイド殺し』について、精神分析家でパリ第8大学教授の、ピエール・バイヤール氏が再解釈したミステリー論です。果たして犯人は本当に、結末で示されている「あの人」なのでしょうか?
バイヤールは、「テクストは多様な読み方に開かれている」という立場から、論のなかで
アガサ・クリスティの示した犯人とはあえて別の犯人を立てる試みを行います。読みを一つに絞っていく性格の推理小説と、解釈を多義的に開いていくバイヤールのミステリー論を対比させ、そのジレンマについて語っていただきました。
いわゆるミステリーと呼ばれるジャンルには、推理小説の大家ヴァン・ダインが示した
「ヴァン・ダインの二十則」と呼ばれる推理小説執筆のための、よく知られたルールが存在します。
真野先生は上記の法則から「いくつ殺人事件があっても、真の犯人は一人でなければならない」を引用しながら、バイヤールの「多様な読みでさまざまな犯人の可能性を探っていく」立場を「ヴァン・ダインの二十則を無効にする、"多義性"のひとつの典型」である、と指摘されました。
物語のルールを疑っていくことで多様な読みが可能になる、というお話に始まり、そもそも「本を読む」とはどういう行為なのか?まで、哲学的な問いが生まれるひとときとなりました。
また、最後にバイヤールが同様に推理小説の「読み直し」を行った作品「シャーロック・ホームズの誤謬」と、読書について語った「読んでいない本について堂々と語る方法」も併せてご紹介いただきました。
「読んでいない本について堂々と語る方法」は図書館に所蔵があります。ぜひ手に取って読んでみて下さい。
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■今回の推薦図書
『アクロイドを殺したのはだれか』
ピエール・バイヤール著(筑摩書房 2001)
請求記号:B933K||3815
資料ID :1189732
『読んでいない本について堂々と語る方法』
ピエール・バイヤール著(筑摩書房 2016)
請求記号:081K||2446||v.0-1233
資料ID :1185752
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次回開催は 5/14 (火) 12:50 ~ 13:20 人文学部 心理人間学科の 中村 和彦 先生です。
お楽しみに!