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「ブックトークおすすめの一冊 」経済学部 経済学科 小林 佳世子 先生
2025年06月23日
第5回:2025年6月18日(水)12:55~13:25
経済学部 経済学科 小林 佳世子 先生
おすすめの一冊:『最後通牒ゲームの謎』小林 佳世子著
ご自身の著書について、本の概要からスタートし、学生時代から経済学に出会うまでの過程や、本の出版に至るまで、30分では足りないくらい盛り沢山の内容をお話いただきました。
小林先生は経済学科の先生ですが、大学進学の際には「社会の仕組みを知りたい。経済学だけはやりたくない。」と別の学科を専攻されていたことに驚きました。さらには、大学での学びがあまりおもしろいと感じられず、他大学の様々な授業に勝手に顔を出していたそうです!その中で「おもしろい」と感じたのが経済学で、図書館で経済学の本を読み漁り、独学で勉強をしたというエピソードが語られました。先生のバイタリティ溢れる行動力と、興味を持ったらとことん追求する熱意が強く感じられるお話でした。
大学院を経て南山大学で教鞭を取る中で、学生が感じている「経済学への違和感」が、先生が経済学に対して感じてきた「違和感」と同じだと気付き、その違和感に向き合って研究した結果、この本が生まれたということでした。
執筆にあたり苦労された点も語られました。一つ目は読みやすさで、「学術的なレベルは落とさずに、誰でも読める本」を目指して執筆されたそうです。全くの素人から経済学の世界へ入った先生ならではの気遣いが伺えました。
二つ目は、用語の統一だそうです。経済学の中で「ヒトはなぜ不合理なのか」を突き詰めると、「ヒトはどのような生き物か?」ということにつながり、その答えを出すために、脳神経科学、進化論、化学、生物学、古生物学、気候、岩石など、様々な分野の論文(約500本)を引用したそうです。分野によって、同じ意味でも違う用語が使われていたりするため、用語の統一がとても大変だったそうです。学生からは「この本を読んでいる途中だが、用語の統一の部分についても着目しながら読んでいきたい」というコメントがありました。
日本語版の出版には7年、英語版の出版には4年かかったそうです。先生は3人のお子様をお持ちで、育児で研究の時間がほとんど取れない中、子供とかくれんぼをしている時も、片手に論文を持って読んでいたという驚愕のエピソードもありました。大変な苦労の中で作品が完成し、「これらの本は、4人目、5人目の子供のように思っています。」というお言葉が印象的でした。
出版後は大きな反響があり、様々な分野の学会から講演依頼があったり、ノーベル経済学賞を受賞したアルヴィン・ロスがブログで紹介してくれたりしたそうです。先生の4人目、5人目の子供たちは、これからも世界中、様々な分野で輝き続けるのではないでしょうか。
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■おすすめの一冊
『最後通牒ゲームの謎』 小林 佳世子著(日本評論社 2021年)
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資料ID:1231999
★第64回日経・経済図書文化賞受賞
The Mystery of the Ultimatum Game : Why We Are Predictably Irrational by Kayoko Kobayashi.. -- 1st ed. 2025.. -- Springer Nature Singapore, 2025. -- (南山大学学術叢書)
電子ブックで閲覧可
★第7回髙島國男自遊賞激励賞受賞
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