図書館について 活動紹介
「ブックトークおすすめの一冊」南山宗教文化研究所 山田 智正 先生
2025年07月07日
第7回:2025年6月27日(金)12:55~13:25
南山宗教文化研究所 山田 智正 先生
おすすめの1冊:『ねむれ巴里』 金子光晴
「ブックトーク おすすめの一冊」の最後を飾るのは、南山宗教文化研究所の山田先生のおすすめの一冊『ねむれ巴里』でした。この本は詩人 金子光晴がヨーロッパ(主としてパリ)での生活を振り返って書いた自伝です。
山田先生は、この本に偶然パリの古本屋で出会いました。17年間のフランス滞在中に専門や学術的興味と関係なく読んだたった1冊の本だった ー といいます。
金子光晴は反骨の詩人として知られていますが、若い頃は世界各地を放浪していました。パリには1930年から2年間滞在し、妻で詩人の森美千代との関係に悩みながら、まだ邦人が珍しかった時代に「無一物の日本人がパリでできるかぎりのことは、なんでもやった」と後に回想するような生活を送っていました。
そんな金子の眼に映る巴里は「淫蕩・汚辱の街」だったと本書に書かれているのですが、詐欺まがいのことをして帰国のための旅費を儲けながら、まとまったお金が手に入れば旅行に使ってしまうような金子と森の破天荒な生き方を「むしろ人間らしい生き方なのではないか」と山田先生は思ったそうです。
藤田 嗣治ほか当時の在仏邦人との交流や、パリの街角の様子 ー それも観光用の美しいパリではなく、治安の悪い裏町で実際に生活していく様子が描かれ、海外に行きたい人、パリを知りたい人にはぜひ読んでほしい1冊だということです。
山田先生は、金子光晴が生活していたモンパルナスのダゲール通りの近くで留学生活を送っていたそうで、金子光晴とご自身を重ねるように、ご自身のパリ滞在生活にも度々触れながら解説してくださったので、聴いている私たちは目の前で繰り広げられている情景のように、パリの街の様子を生き生きと思い描くことができました。
-----------------------------------------------------------------------------------
■おすすめの一冊
請求記号:081K||2404||v.0-87
資料ID:1018351
-------------------------------------------------------------------------