図書館について 所蔵資料紹介
【その他の個別貴重資料】Summa Theologica Moralis, I, II, III, IV (アントニーヌス『倫理神学大全』) (貴重書)
書誌情報 | Summe Fratris Anthonini de Flore[n]tia ordinis p[re]dicato[rum] et Archiep[iscop]i Flore[n]tini / [Antoninus Florentinus, Archbishop of Florence] |
出版事項 | Nurnberg : Antony Coburger , 1478 (pars 1), [1477](pars 2), [1478](pars 3), 1479(pars 4) |
ページ数・大きさ |
Pars 1:ca. 494 p. ; 49 cm Pars 2:ca. 634 p. ; 49 cm Pars 3:ca. 872 p. ; 50 cm Pars 4:ca. 668 p. ; 49 cm |
請求番号 | 191W/9/v.1-4 |
本書は一般に『Summa Theologica』と呼びならわされているが、 あまりにも著名なトマス・アクィナスによる同書名が存在するため、 本学では長年『Summa Theologica Moralis』と表記して区別してきた。 しかし、これらはあくまでも通称であり、現物の情報からルールに則り正式に書誌として採録すれば上記のように表記される。
本書はフィレンツェの大司教アントニーヌス(ANTONINO Pierozzi, Archbishop of Florence, 1389-1459)による神学書。彼は15世紀の教会改革運動の推進者であるばかりでなく、フィレンツェ・ルネッサンスに広く指導的役割を果たした。大司教としてはフィレンツェ人のメディチ家に対する自由を慎重に支持し、その学問的著述は思弁的要素よりも実際的用途が強く、聖職者や信者に対する教えを重視した。 代表的著作である本書は、その社会経済的見解を知る上で重要であるばかりでなく、15世紀の版本(=インキュナブラ)の中でもドイツ・ニュールンベルグの著名な印刷工房アントン・コーベルガー印行のインキュナブラとして、印刷文化史上貴重なものである。 アメリカでの所蔵状況を調べると、完本は4ヶ所確認されるのみで、その稀覯性が裏付けられる。この他にもBritish Libraryで完本を所蔵しているが、国内ではおそらく本学所蔵の完本が唯一と思われる。
学生英字新聞『NANZAN HEALD』No.9(1959.4.25)の「BOOK TALK」に、この貴重な資料を入手したことが紹介されているが、「A few years ago Nanzan University Library acquired a rather rare work which deserves more attention.」とだけあり、この資料がどのような経緯で本学に辿り着いたかは定かではない。ただし各巻の第1頁の下欄に「Loci Capuccinorum Bambergae 1638」(1638年バンベルクのカプチン修道会所有)の書き込みがあり、かつてドイツ・ハンベルクのカプチン・フランシスコ修道会が所有していたことがわかっている。
【参考文献】
- ・「BOOK TALK」学生英字新聞『NANZAN HERALD』No.9(1959.4.25)
- ・「ANTONINO PIEROZZIのSUMMAについて」テオドロ・P.ヴァンザイル(館灯)1, p.5-13, 1961.12