NU-COIL by Nanzan University南山大学NU-COILプログラム

国際産官学連携PBL Cプロジェクト 未来の車のカタチを提案する 小島プレス工業株式会社×アリゾナ州立大学×南山大学

PBL COILとは?What is PBL COIL?

SNSやビデオチャットなどのオンラインツールを活用して、緊密に連携する海外協定校の学生と授業内外で協働プロジェクトや意見交換を行うCOIL型授業。このCOIL型授業をベースにした南山大学ならではのテーラーメイド型教育プログラム「NU-COIL」は、平成30年度に文部科学省「大学の世界展開力強化事業」に採択されました。
NU-COILの一環である「PBL COIL」は、南山大学と海外協定校の学生が協働して、企業や団体、官公庁が抱えているビジネスや行政上の課題に取り組む実践型の授業です。

2019年度第3クォーターの『国際産官学連携PBL C』では、自動車内外装部品メーカーの小島プレス工業(株)からご提示いただいたプロジェクトテーマ、「未来の車のカタチを提案する」に、アメリカのアリゾナ州立大学と共に取り組みました。このテーマは世の中の変わりゆく車へのニーズに対し、学生が彼らの目線で新しい車の在り方や、コンセプト、それに伴う車内のアイテムについて考えるものです。授業の最終課題は、プロジェクトの成果を小島プレス工業(株)に向けてプレゼンテーションすること。日米の学生が、COIL(オンラインによる海外の学生とのバーチャルな交流)を通して、課題に向けたディスカッションを重ねました。

Voice01 参加学生の声

アメリカの学生と共に課題に挑む
貴重な体験ができました。

国際教養学部 国際教養学科3年
山本真由さん
外国語学部 スペイン・ラテンアメリカ学科(スペイン専攻)3年
橋本夢実さん
外国語学部 スペイン・ラテンアメリカ学科(ラテンアメリカ専攻)2年
坂野拳司さん

『国際産官学連携PBL C』を受講した動機を教えてください。

私はもともとサスティナビリティやエコにつながる学びに関心があり、この授業を受講しました。
また、今回の連携先であるアリゾナ州立大学に1年間の長期留学をしていたことがあり、南山大学とアリゾナ州立大学との架け橋になりたいと思ったことも大きな理由です。
私は2年生ということもあり、まだプロジェクト型の授業に取り組んだことがありませんでした。ですから、企業と連携できるこの授業は、チャンスだと思いました。また、今回連携したアリゾナ州立大学の学生は、「Business Japanese」の授業を受講している日本語が堪能な学生ばかり。「英語で伝えなければ! 」というプレッシャーがなく、受講のハードルがぐんと下がりました。
南山大学で外国の学生とコミュニケーションする機会といえば、英語を使用することがほとんどです。しかし、この授業では、アリゾナ州立大学の学生にとって母語ではない日本語を使って、私たち南山大学の学生とプロジェクトに取り組むという点に興味を抱きました。
もちろん、企業との連携も受講の大きな動機です。

『国際産官学連携PBL A』『国際産官学連携PBL B』の海外協定校とのやりとりは英語を使用。

連携プロジェクトの内容や具体的な進行について教えてください。

小島プレス工業さんから提示いただいた「未来の車のカタチを提案する」というテーマに、南山大学・アリゾナ州立大学混成のグループで取り組みました。
まずは小島プレス工業さんから、課題に取り組むための考え方やプロセスについてのレクチャーを受け、その内容をアリゾナ州立大学の学生と共有することから始めました。
各グループメンバーの自己紹介が済んだら早速、小島プレス工業さんに「未来の車のカタチ」を提案することをめざした意見交換に入りました。私のグループメンバーは私を含め3人。アリゾナ大学のメンバーの1人は、バックグラウンドが韓国と日本にある学生だったこともあり、すぐに打ち解けることができました。
私のグループは、南山大学2人、アリゾナ大学1人の3人メンバーでした。小島プレス工業さんのレクチャーに従って、「未来の社会」を想像し、イラストに描くことでそれぞれの意見を抽出。グループのテーマは、「環境に優しい社会」にしました。他の4グループも、導き出したテーマごとに未来の車や移動のあり方を考え、プレゼンテーションの制作に挑みました。

双方の大学で展開する二つの授業が連携

アリゾナ州立大学の授業「Business Japanese」―連携―南山大学の授業「国際産官学連携PBL C」

『国際産官学連携PBL C』 の主な流れ

1.課題と情報の共有(小島プレス工業→南山大学) 2.課題と情報の共有(南山大学→アリゾナ州立大学) 3.ディスカッション(南山大学とアリゾナ州立大学) 4.プレゼンテーション資料の作成(南山大学とアリゾナ州立大学) 5.プレゼンテーション(南山大学→小島プレス工業)

アリゾナ州立大学の学生との情報共有はスムーズにできましたか?

ディスカッションでは主にSkypeのビデオ通話を使用し、簡単なやりとりにはLINEメッセージを利用しました。ビデオ通話によるディスカッションに、何時間もかけるわけにはいきません。アメリカとは16時間の時差があるため、限られた時間内に効率よくアイデアを出していくことや通話時間の確保に努めました。
時差といえば、プレゼンテーションの準備中、分担した作業の確認のたびに、一晩の時間的なロスが発生することにはジリジリしました。振り返って考えれば、お互いの期限をきちんと時間で指定するなど、もっと工夫が必要だったと思います。
私のグループでは、複雑な内容はWordにまとめて共有するように工夫していました。特に時間帯を気にせずにLINE中心でやりとりしたこともあり、時差による不都合はほとんどなかったです。一方で、母語が異なる相手とのコミュニケーションの難しさには直面しました。相手から反応が返ってきて初めて詳細がスムーズに伝わっていないことに気づき、二度のディスカッションにわたって認識のズレを解消できなかったことも。
コミュニケーションのすれ違いに関しては、国際産官学連携PBL Aで学んだことが役立ちましたよね。「日本は価値観を共有して空気を察し合うことができるハイコンテクスト文化であるのに対し、アメリカは言語によって明確に意思伝達することが求められるローコンテクスト文化である」と学び、はっきり言葉にして伝えることを心掛けました。
コミュニケーションの問題に関しては、アリゾナ州立大学での長期留学時にコミュニケーション学を学んだことが役立ちました。特に、日本語の授業でTA(Teaching Assistant)を務めた経験は大きかったです。なるべく相手がYES・NOで回答できるように問いかけ、また、「~してください」「~です」と言い切るように心掛けました。それでも、今回のSNSを通したやりとりでは、英語での補足が必要だったことが二、三度あり、難しさを感じました。

文化や言語の異なるアメリカの学生との連携を通じて、何を学びましたか?

アリゾナ州立大学の学生の意見や視点は、やはり日本人とは異なる部分が多く、新鮮に感じました。IoT(Internet of Things)への理解やエコへの姿勢など、私が持っていなかった知識や視点も集約して、グループの意見としてプレゼンテーションすることができました。
少子高齢社会という日本の課題を前提に話を進めていたら、アメリカや中国では地域によって人口増加傾向にあると言われて驚いたことがありました。環境が違えば課題も変わることを知り、多様な提案内容につなげることができました。
私は、ノースジョージア大学と連携する『国際産官学連携PBL A』も同時に受講していたため、ノースジョージア大学の学生とアリゾナ州立大学の学生では同じアメリカ人でもバックグラウンドが全然異なることを知り、またそれぞれの地域の印象も変わりました。私たち南山大学の学生も、アリゾナ州立大学の学生が抱いていた日本人のイメージを変えたのではないでしょうか。お互いに勝手に抱いていた「アメリカ人」「日本人」のイメージを覆す良い機会になったと思います。

自動車・電化製品など、IT機器以外の「もの」が、インターネットにより相互に接続されているシステム。物のインターネット。『広辞苑』第7版 岩波書店より引用

小島プレス工業さんへのプレゼンテーションはいかがでしたか?

当初は、エンジニアリングの知識がない私たちでも小島プレス工業さんが求める成果を提供できるのかと不安でした。でも、実際に始めてみると、いきなり車について考えるのではなく、「10年後の未来を自由に考えてほしい」「大学生にしかできない意見を求めている」という言葉をいただき、自由な発想を提案することができました。
私の場合は、プレゼンテーション資料を作成すること自体が初めてだったので、貴重な学びとなりました。各メンバーが、担当するスライドの内容を説明したナレーション動画を準備し、それをパワーポイントの各スライドへ挿入してまとめて、小島プレス工業さんにお見せしながら発表しました。当日発表を担当した南山大学のメンバーがスライドをストップして補足説明なども行いました。
資料の準備にあたっては、藤掛先生だけでなく、他の授業でのプレゼンテーションで先生方からいただいたアドバイスも生かす良い機会になりました。簡潔にまとめるだけで十分だと思っていましたが、「パッと見ただけで言いたいことが伝わる資料であることが大事」だと知り、プレゼンテーションに向き合う意識が変わりました。企業に向けて発表するという経験を経て、アイデアの提案に必要なスキルと意識を学べたことに満足しています。

プロジェクトの成果や達成感についてはいかがでしたか?

ちょうど就職活動に入る時期と重なり、大学のキャリア支援室から「キャリアプランを考える際には、学んできたことを振り返るだけでなく、今後やりたいことを設定することも必要」というアドバイスを受けていたことで、自分の将来像とプロジェクトテーマの「未来の車のカタチを提案する」を、リンクさせて考えることができました。
もともとの受講理由である企業との連携と、母語が異なる学生との交流を、期待以上のレベルで経験することができました。私たちの母語である日本語を通して、より深くお互いの文化や考えの違いを学ぶことができる、達成感のある授業でした。
受講前に選考が実施される授業だったこともあり、学ぶ意識の高い学生が集まる授業で、前向きに取り組むことができました。アリゾナ州立大学の学生も、日本への関心度や学習意欲が高く、小島プレス工業さんからの熱い協力も得て、みんなで高め合い、学び合う、貴重な体験となりました。

Voice02 連携企業の声

"既成概念にとらわれない自由な発想"を求めて。

小島プレス工業株式会社

総務人事部 主査
伊藤剛一さん

技術統括部 商品企画課 課長
中村忍さん

総務人事部 人財開発課
市川寛さん

技術統括部 商品企画課 担当員
中西秀夫さん

南山大学とのコラボレーションに至った経緯を教えてください。

豊田市に本社を構える小島プレス工業は、創業80年余りの自動車部品メーカーです。大手自動車メーカーを取引先として、自社で開発・設計・量産化した自動車の内装部品や一部の外装品を主に生産しています。
もともと小島プレス工業と南山大学は、人材育成面において、長きにわたる交流実績がありました。今回のコラボレーションは、学生と企業の双方にとってWinWinの成果をもたらす産学連携の試みができないかと、南山大学国際センターと藤掛千絵先生、弊社の人財開発と技術開発の担当者が検討を重ねて実現したものです。

どのような思いで今回の連携プロジェクトに臨まれましたか?

100年に一度の大変革期を迎えた自動車製造業界では、未来社会に求められる車や移動のあり方を見据えて、商品開発を進めていかなければなりません。
しかし、弊社の社員は仕事を通じて技術的な知識があり、もともと自動車への関心が高いために、既成概念にとらわれずに自由に発想することがなかなか難しいという課題がありました。海外の価値観に触れる機会の不足もあり、日本だけの狭い常識にとらわれがちでもあります。
そのような前知識などによって生じる束縛がない、若者らしい発想と文化やコミュニケーションの壁を乗り越えた先のグローバルな意見を期待して、プロジェクトに臨みました。

学生たちの取り組みの姿勢はいかがでしたか?

今回、私たちがレクチャーを通してお伝えしたアイデアを描くためのプロセスは、弊社の社員教育の一環として新入社員が取り組んでいるプログラムを大学生向けにアレンジしたものです。
学生の皆さんには、そのプロセスの理解はもちろん、求められている成果を把握したうえで、高いモチベーションを持って取り組んでいただくことができました。
自ら志望して受講した授業であったことも、「受け身」でない学び方につながったのではないでしょうか。
弊社の社員教育の課題でもある、モチベーションや自発的な取り組みの姿勢へのヒントをいただいたと感じています。

学生によるプレゼンテーションの感想をお願いします。

弊社にとってこの連携プロジェクトの目標は、商品開発に欠かせない豊かな発想の源となる「新しい視点」を得ることでした。
最終授業で全5グループからご提案いただいた「未来の車のカタチ」は、まさに私たちが求めていた新鮮な着眼点を感じられるものばかり。
どのグループの発表にも、非常に高いコミュニケーション力とプレゼンテーション力があったと思います。
この成果は、社内の関係者にフィードバックするとともに、現在、作成構想中である小島プレス工業版「未来年表」のストーリーにも取り入れていきたいと考えています。

市場や技術の未来予測に基づいて、組織の未来像を年表形式で記載する中長期計画。

プロジェクトで協働した学生にメッセージをお願いします。

今回のプロジェクトを通して、参加した学生の皆さんは、チームで取り組む力、人の話をまとめる力、プレゼンテーション力を磨くことができたと思います。これらはすべて、企業で働く際に求められる力です。
授業で得た力を自分の強みにして、今後に活かしてほしいと願っています。

Voice03 担当教員の声

言葉と文化の壁を越えて、プロジェクトを成功に導くために。

国際センター NU-COIL(大学の世界展開力強化事業)特別任用講師
藤掛千絵

『国際産官学連携PBL C』の授業の目標を教えてください。

この授業で連携した3者の目標はそれぞれ異なります。小島プレス工業様には、未来の車のユーザーとなりうる学生から斬新なアイデアを得たいとの思いがありました。
「Business Japanese」という上級レベルの日本語クラスを受講するアリゾナ州立大学の学生が求めたのは、日本人とリアルタイムで交流することで、生きた日本語を学ぶことです。
南山大学の学生にとっては、小島プレス工業様の指導によって企業レベルの企画・提案のプロセスを学び、他国の学生と共に与えられた課題において成果を出すことが目標でした。
さらに、アリゾナ州立大学の学生との交流を通して、母語が異なる人との協働に必要なコミュニケーション力を磨きながら課題解決力を養うことをめざしました。
企業と日米の大学の学生が目標に到達するように導くことが、この授業における担当教員の役割だと考えています。

3者の到達目標

アリゾナ州立大学(ビジネス、日本語を学ぶ。)―CONTACT―南山大学(課題解決力を養う。)―CONTACT―小島プレス工業(商品開発のための新しい視点を得る。)

連携プロジェクトを成功に導くために必要なことは何でしょうか?

担当教員が自分本位ではないマネジメントに徹することだと思います。
学生たちがプロジェクトの課題や目的からはずれないようにアドバイスすることで小島プレス工業様の求めるものへ少しでも近づくよう、私自身も学生たちと共に考えました。
一方で、このプロジェクトはアリゾナ州立大学の学生にとっても、生の日本語を学び、日本語学習のモチベーションが高まる機会になっていなくてはなりません。
アリゾナ州立大学との交流が滞っていないか、トラブルはないかなど、常にアンテナをはって対応に努めました。
アリゾナ州立大学側の担当教員とこまめに連絡を取り合い、先方が困っていることがないかを確認しながら授業を進めました。

授業における指導のポイントは何でしょうか?

教員が"正しい道筋"を押しつけてしまわないことが大事です。
学生の意欲や好奇心を生かすためには、せっかくの発言やアイデアに対して「正解・不正解」で白黒をつけないことだと思います。
ビジネスのアイデアは、他社との差別化において、時に多くの人が不正解だと思うものからヒントを得られることもあるはずです。
だからこそ、学生が"気づき"を得られるようなアドバイスを心掛けました。
アリゾナ州立大学とのやりとりにおいては、ハイコンテクスト文化である日本では感じたことのないコミュニケーションの難しさがあったと思います。
異文化間の交流で起きたすれ違いの原因は何か、解決には何が必要なのかヒントを与え、学生自身が自ら考えて言動を工夫できるようにサポートしました。

実践から見えてきたPBL COILのメリットは?

座学とは異なるプロジェクト型の授業、かつ、企業から成果を評価いただける貴重な機会でもあり、学生たちにとっては新鮮な学びとなりました。
一人ひとりが受け身になることなく、責任感を持って取り組むことができたと思います。
授業後も講義室に残ってディスカッションする姿を見かけるなど、意欲の高さを感じました。
また、企業の考え方や社内での研修のプロセスに触れて、近い将来、社会に出て働くことを実感する機会にもなったようです。

今回の授業を終えた感想と今後の抱負を教えてください。

国を問わず、古くからある授業の形式は、先生が教壇でレクチャーし、学生は静かにそれを聞くというものだと思いますが、今回の『国際産官学連携PBL C』の授業では、プロジェクト型という授業の性質上、レクチャーは8回の講義のうち2回程度で、その他の時間では、私も学生たちと一緒になってアイデアについて吟味し、意見を交わし合いました。
その中で、私自身、学生たちの発想力や各自が所属する学部で積み重ねてきた知識や教養の豊かさに毎回感心していました。
初回の授業では、「皆が自分の持てる知識や能力を精一杯生かして、クラス全体で協力して良いものを生み出してほしい」と伝えていましたが、その通りというか、期待以上に主体性を発揮してくれた学生たちから、私も多くを学び、学生たちにとても感謝しています。
また、文化も言語も異なる相手とのコミュニケーションと、企業へのプレゼンテーションという大きなミッションに挑み、しっかりとやり遂げてくれました。
PBL COILという試みは、まだ始まったばかりです。今後も目先の結果だけにとらわれず、授業のあり方を常に考えながら、学生に向き合っていきたいと思います。

PBL COIL 今後の展望

LMSの活用

LMS(Learning Management System:学習管理システム)のプラットフォーム上で協定校と南山大学の学生・教員がリアルタイムに情報交換することで、COIL型授業ならではのリアルタイムコミュニケーションをより進めることができます。
今後は、このLMSの活用を広げていく予定です。

授業サポートの詳細

ベーシックCOIL、アカデミックCOILとの関連づけ

COIL型授業の別カテゴリーであるベーシックCOIL・アカデミックCOILを、PBL COILと関連づけて学ぶ、ステップアップ型の学習モデルの確立をめざします。

COIL型授業の詳細

NU-COIL産官学連携への参画について

PBL COILやインターンシップなどNU-COILを通じた本学との連携にご関心のある企業・団体様からのお問合せやご要望などは
下記お問い合せ先メイルアドレスにて承ります。

お問い合わせ先coil-support@nanzan-u.ac.jp