NU-COIL by Nanzan University南山大学NU-COILプログラム

国際産官学連携PBL B プロジェクト「障害者のソーシャル・インクルージョン バリアフリーマップ制作」 AJU自立の家×デンバー大学×南山大学

PBL COILとは?What is PBL COIL?

南山大学独自のテーラーメイド型教育プログラム「NU-COIL」の上級科目で実践的なCOIL型授業。
『国際産官学連携PBL』の授業を通じ、南山大学と海外協定校の学生が協働して、企業や団体、官公庁が抱えているビジネスや行政上の課題に取り組みます。

今年度は、新たなプロジェクトとして、南山大学のバリアフリーマップを制作する課題を、社会福祉法人AJU自立の家よりご提案いただきました。
実際に障害をもち車椅子で生活をされている方々と一緒に学生たちがキャンパスでフィールド調査を行い、学生自身も車椅子に座って体験をしました。
フィールド調査から気づいたことや、そこで湧いた疑問をデンバー大学の学生たちと話し合い、互いのキャンパスの様子や設備について写真交換をしながら比較し議論しました。

Voice01 参加学生の声 車椅子利用者からの世界の見え方を学び、自分の視野が大きく広がりました。「国際教養学部 国際教養学科2年:加藤 楓佳さん」「法学部 法律学科2年:市川希香さん」

デンバー大学の学生と意見交換や情報交換をして、印象的だったことは何ですか?

日本では「障害者」と聞くとネガティブなイメージを持つ人が多く、その話題を避けがちですが、デンバーの学生は、障害を持つ友人や家族のことについて積極的に話をしてくれました。
障害者の問題がデンバーの学生にとって、より身近だと感じました。例えば、「障害者を助けたことがあるか」と質問した際には、キャンパス内で車椅子を押すのを手伝ったりバイト先で点字のついたメニューを出したりなど自分の経験をすぐに語ってくれました。
私は「障害者を助けた経験」として思い浮かぶことは何もなかったので、その問題が自分の生活でいかに身近なことでないかを実感しました。
ただ一方で、確かにアメリカには、重いドアを開けるためのボタンのように、日本にあまりない設備がありますが、点字ブロックやAEDのように、日本では当たり前だけど、アメリカではあまり普及していない設備もあることがわかりました。
また、古い建物には車椅子ではアクセスできない点は、どちらの大学も同じでした。お互いのキャンパスの良い点を積極的に取り入れていくべきだと感じました。

AJU自立の家の方々とのフィールドワークを経験して感じたことを教えてください

車椅子に乗ってみると物理的にも精神的にも見る世界が全然違うなと感じました。まず、車椅子に乗ると視線が低くなるためすべてのものがそびえ立っているように見えます。
例えば、自動販売機のボタンが高かったりトイレの入り口が狭く圧迫感を感じたりしました。一人で移動するのはとても不安になると感じました。
想像以上に「できないこと」が多いです。ドアを開ける、教室内を移動する、コンビニで商品を購入する、机で勉強をするといった普段の学生生活の中で当たり前に行えていたことが、「車いすに乗っているだけ」でできなくなることが分かりました。
上りやすいスロープがあったりエレベーターの乗り降りに便利な鏡があったりした際にはとても嬉しくなって心が温かくなりました。
小さな工夫をするだけで大きな心情の変化になるのだと感じました。
私はこの授業を受けるまで、障害者のための標識や設備にあまり意識を払ったことがありませんでした。南山大学に多目的トイレがあることすら知りませんでした。でも実際に車いすに乗ってみると、それに気づき、温かい気持ちになりました。

緊張の最終発表を経て、どんなことを考えましたか?

本当にみんなが過ごしやすい環境を作ろうと思ったら、それぞれの立場の人にきちんとお話を聞いてプランについて意見を聞くことで、よりいいものになるのだと考えました。
そうしないと、「誰かのためにやっている」という自己満足になってしまうのだろうと感じました。
南山大学では車いす利用者をほとんど見かけません。まずは、使いやすい施設もあるということを周知し、実際に当事者の方に来ていただいて、改善できるところは改善していく、という流れでバリアフリー化を進めることが最も効率的だと感じます。
そのため、このマップを見た方に南山大学に来てみたいと思ってもらい、より良いキャンパスを作り上げる一歩になればよいと感じました。

全体を振り返って学んだこと、感じたことなどを聞かせてください

私は自分の視野を広げたいと考え、一年生のころから海外の方とお話する機会を意識的に増やしていました。でも今回、AJU自立の家の方々とプロジェクトを一緒にやって、障害者からの世界の見え方を学び、自分の視野が大きく広がりました。例えば、駅の点字ブロックはどうなっているのか注意深く見てみたりエレベーターの位置を確認したりと普段は見なかったところまで見るようになりました。
私も駅やショッピングモールで、障害をもつ利用者に対してどのような配慮がなされているか、困っている人はいないか、などを気にするようになりました。
私の祖父と祖母は高齢で身体が不自由なので私がやらなくちゃと以前は思っていましたが、辻さんが「出来ないことは頼むから、頼まれたら手伝えばいいよ」と言ってくださったのを聞いてなるべく見守るようになりました。そうすると祖父も祖母も自分のやりたいことを生き生きとやっていることに気づきました。
自分自身、偏見をあまり持っていないと信じてましたが、明るく面白くお話をされる辻さんに出会って、自分が「障害者=悲観的、人前に出るのが苦手」という偏見を持っていたことに気づき、正直とてもショックでした。想像や決めつけが、思っている以上に沢山あるのではないかと改めて考えさせられました。

Voice02 連携組織の声 学生たちが現代の社会問題の一端を考え意識することにも繋がったのでは「社会福祉法人 AJU自立の家 常務理事 辻直哉様」

今回のプロジェクトの概要・実施が決まったときの気持ちや期待したことなどを教えてください

正直言って不安でした。というのも福祉とはまったく関係のない国際系の講義ということもあり、私の考えが先生をはじめ、学生の皆さんに伝わり、理解してもらえるか自信がありませんでした。ただ、海外の大学と交流があることを聞き、私自身も海外の先進事情を知る絶好の機会でもあったので、一緒に学ぼうという姿勢で臨みました。

特別講義やフィールドワークでの学生との交流を通して感じられたこと、また印象に残ったことがあれば教えてください

フィールドワークでは、車いす体験も含めて、どういったところが使いづらいかを見るための、いわゆるバリアフリー調査を行ったのですが、車いす操作もすぐに慣れ、積極的に自ら調査に取り組む姿勢はすばらしかったです。
特に、調査の中で、視覚障害者用誘導点字ブロックの設置方法に問題があったことに気づけたことは、大きな成果でした。またAEDの設置場所等も自ら調査項目に設定し調査するなど、事前学習を含め社会問題等にしっかりアンテナを張っていると感じました。

学生たちのプレゼンテーションや提案内容へのご感想・評価をいま一度お願いいたします

中間発表の段階では、やや不安でしたが、最終発表ではたいへんわかりやすくまとめられており、プレゼンテーション自体、学生とは思えないほど、社会で十分通用する内容だったと思います。
海外の大学との比較では、写真を多く使用し、違いが分かりやすく説明されており、さらに、違いの要因は何かという視点で、法制度やバリアフリー施策の分析といったところまで、深く探求されている点は驚愕でした。

「大学と外部組織の連携」について、外部組織側から見た連携の意義について、感じられたことがあれば教えてください

「バリアフリー」という社会問題について、「大学生」と私たち「障害当事者」という立場が違う者が一緒に議論したことで、大学関係者も含めて現代の社会問題の一端を考え意識することにも繋がったのではと思います。今まで様々なところでゲスト講師としてお話しさせていただきましたが、フィールドワークや、投げかけた社会問題についてどう解決するか議論することはありませんでした。障害当事者の私たちも国際情勢から物事を考え、何を一緒に考え行動すべきかに気づけたように感じます。
今回のように学生と双方向で互いの立場を理解することが現代社会に求められているインクルーシブ社会構築の基礎だと改めて感じることができました。

最後に、ご感想や学生へのメッセージ、取組み全体について感じられたことなどを聞かせてください

できればもう少し長期的に取り組むことができればと感じました。藤掛先生におかれましては、試行錯誤しながら学生を導いていただいたことに深く感謝いたします。
学生の皆さんは今後社会の第一線で活躍されるわけですが、様々な社会問題についていろんな角度から物事を考え、困っている人たちが何を求め、どう解決できるのかといった視点を大事にしていただきたいと思います。短い講義期間でしたが、私としても多くの発見ができたことに関係者皆様にお礼を申し上げます。ありがとうございました。

Voice03 海外連携大学の声 文化の違いだけでなく共通点も見つけられ、実りのある交流になった 「米国デンバー大学 Teaching Assistant Professor, Japanese 濱本美穂先生」

今回の取組みを通して、デンバー大学の学生にとって、日本語教育の観点からどのような効果があったでしょうか?

今回参加したデンバー大学の学生は日本語を勉強し始めたばかりで、日本人と交流するのは初めてだという学生がほとんどでした。日本語を使って、実際に日本人の学生とコミュニケーションがとれたのは、とても良い経験になったと思います。
この交流をきっかけに「もっと日本語が話せるようになりたい」「日本の文化について知りたい」とモチベーションが上がったという声もありました。アメリカ文化と日本文化の違いだけでなく、共通点も見つけられ、実りのある交流になったと思います。日本に留学を希望する学生も多いので、大学生活やキャンパスについて南山大学の学生から直に話を聞けたのも良かったと言っていました。

「障害者のソーシャル・インクルージョン」というテーマで学生同士が意見交換をしましたが、デンバー大学の学生たちからの感想・反応はどのようなものだったでしょうか?

南山大学の学生から日本の制度や現状について話を聞き、日本はバリアフリー化があまり進んでいない印象を受け「驚いた」という声が多かったです。また交流を通して、アメリカの障害者の方々へのアコモデーションや、自分たちの大学のアクセシビリティについて改めて考える良い機会になったようです。ZOOMミーティングでは、南山大学の学生に、デンバー大学のキャンパス内のバリアフリーになっている場所の写真をシェアしたり、アメリカの制度について説明したり、とても有意義な時間を過ごせたようです。このように意見交換できたことは、学生にとって学びの多い体験になったと思います。

Voice04 担当教員の声 連携組織とのコミュニケーションと「お互いが」目的を理解することが大切「南山大学 特別任用講師 藤掛千絵」

先日、学生が主体で制作しているウェブマガジンのためのインタビューを受けた際に、「講義をする際に工夫されていることや、大事にされていることは何ですか?」と聞かれました。
昨年度までは「学生の発想やアイデアを大切にすることです。」と答えていたと思いますが、今年度のPBL COIL Bの授業を経験し、連携組織とのコミュニケーションが授業実施において大切だということを再認識しました。

特別講義に来てくださる機会があっても、毎回来て、いつもそばで学生の質問に答えてくださるわけではありません。そのため、学生がプロジェクトを進めるには、担当教員が学生たちに寄り添い、特別講義の内容をかみ砕いて、よりわかりやすく具体的に伝えたり、折を見て再度伝える必要もあります。また、「何を学生に期待するのか」「何に気づいて考えてほしいのか」という目的や「思い」を、時間の許す限り、ご担当者と話し合ってみることは、このような性質の授業を実施するためにとても重要だと実感しました。

シンポジウムなどでは、他大学から、「どのように外部組織と連携体制を築くのか」という質問を受けることがあります。もちろん、以前からのつながりがある企業・団体さんに改めてお願いをするということもありますが、必ずしもそうではないケースもあります。
いずれにせよ連携は交渉次第ですし、いつもこちらの都合を聞いてもらえたり、思い通り、期待通りに物事を進められるわけではありません。それは企業・団体だけでなく、海外の大学との連携でも同じことが言えます。
ただ、納得してもらい、合意を得るためには、共通の目的を明確にし、「お互いが」その目的を理解していることだと思います。当たり前に聞こえるかもしれませんが、実施してみるとその重要性を感じます。
今後も、新たな可能性に挑戦できるよう私自身も学び続けながら、新たな連携体制を築くことも、楽しみにしています。

PBL COIL 今後の展望

LMSの活用

LMS(Learning Management System:学習管理システム)のプラットフォーム上で協定校と南山大学の学生・教員がリアルタイムに情報交換することで、COIL型授業ならではのリアルタイムコミュニケーションをより進めることができます。 今後は、このLMSの活用を広げていく予定です。

授業サポートの詳細

ベーシックCOIL、アカデミックCOILとの関連づけ

COIL型授業の別カテゴリーであるベーシックCOIL・アカデミックCOILを、PBL COILと関連づけて学ぶ、ステップアップ型の学習モデルの確立をめざします。

COIL型授業の詳細

NU-COIL産官学連携への参画について

PBL COILやインターンシップなどNU-COILを通じた本学との連携にご関心のある企業・団体様からのお問合せやご要望などは
下記お問い合せ先メイルアドレスにて承ります。

お問い合わせ先coil-support@nanzan-u.ac.jp