PBL COILとは?What is PBL COIL?
南山大学独自のテーラーメイド型教育プログラム「NU-COIL」の上級科目で実践的なCOIL型授業。
『国際産官学連携PBL』の授業を通じ、南山大学と海外協定校の学生が協働して、企業や団体、官公庁が抱えているビジネスや行政上の課題に取り組みます。
今年度は、地下鉄最寄り駅から南山大学に至るまでのオーディオマップを制作する課題を、社会福祉法人AJU自立の家よりご提案いただきました。
車椅子の方や、視覚障害をお持ちの方と一緒に学生たちがフィールド調査を行い、色々なお話を伺いながら学生自身も車椅子に座って体験をしました。
フィールド調査から気づいたことや、湧いた疑問をメリーランド大学ボルティモアカウンティ校(UMBC)の学生たちと話し合い、互いのキャンパスの様子やキャンパス周辺の状況について写真交換をしながら比較し意見交換をしました。
プロジェクトのはじめに辻さんや瀬戸山さんのお話を伺い、障がいは決して他人事ではなく、誰にとっても身近なものであると気づきました。日頃から健常者、障がい者と物事すべてを分けて考えていたことは正しくなかったと感じ、この気づきを制作物に反映させました。最終発表では「障がいの有無に関係なく、『誰もが暮らしやすい環境をつくる』という着地点がよい」と講評をいただきました。今後も、この考え方を基盤に、得た気づきを広く発信していきたいです。
この授業を受講するまで、私は「障害」をもつ人々はどちらかというとマイノリティに属しており、自分は「健常者」の側にいると思っていました。でも、私が「健常者」でいるということは、駅やエレベーターの構造をはじめとする社会のあり方と、自分の歩き方や見え方、感じ方がたまたま合致した結果に過ぎないということに気づきました。いつでも誰でも「障害者」に分類される可能性があると考えることで、誰にとっても使いやすいモノやサービスが提供できているか、と思いを巡らせることが可能になります。オーディオガイドの作成にあたっても、この視点を意識できたと思います。
AJUの方々からお話を聞いて特に印象的だったことは、「日常生活で障害者の方々とあまり出会わないのは、障害者の方々が街に出ることができないからだ」とおっしゃっていたことです。私がこの授業を履修しようと思ったきっかけには、昨年、障害者と健常者が一緒に農業をして生活する村でのワークキャンプを経験したことで、障害者と健常者が学校や就労など様々な場面で分離されるのが当たり前になっている現在の社会に疑問を持つようになったことがあります。
UMBCでは障害のある学生に対するサポート体制が充実しており、私が話をしたUMBCの学生には実際に車椅子や精神障害者の友達がいるなど、障がい者の受け入れが進んでいるのではないかと思いました。ソーシャル・インクルージョンに向けて、日本でも子どものうちからお互いのことを知り、尊重することの大切さを学ぶきっかけとして、障害の有無に関わらず一緒に学ぶ環境を整えていくことは今後の課題であると感じました。障害や福祉へ関心をもつ一つのきっかけとして、今回私たちがユニバーサルデザインの視点から制作したオーディオマップも多くの人に聞いてもらいたいです。
連携した米国大学(UMBC)と南山大学はどちらも坂の上にキャンパスがある点で地形が似ているため、UMBCでのバリアフリーがどのようになっているのかについて知り、南山大学と比較することができました。UMBCでは階段を回避するルートとしてスロープの道があるということや、広いエレベーターがあることなど、自分たちのオーディオマップを作り上げる上で、新しい視点から考えることができました。ユニバーサルデザインの環境が増え、誰もが過ごしやすいような街が広がって欲しいと感じました。
グループワークを通して学んだことは、「障害者の為」ではなく、「皆の為」という意識を持つことの重要性です。誰にとっても使いやすいマップを作るために、この授業を受講する他の学生と、どんな工夫があれば障害者以外の人にとっても利便性の高いものになるかという意見を出し合う中で、自分にはない多種多様な考えに触れることによって、受講前と比べて様々な視点に立って物事を考えることができるようになりました。
制作物
海外連携大学からの参加学生
Connecting with people and gaining insight from across the world in Japan were incredibly meaningful--this way of connecting and understanding is one of the few experiences that would be memorable for the years to come. Meeting actual students from Nanzan allowed me to relate and see eye to eye. I learned the way of life of another culture which made me realize there are some things I wish we could adopt and some things I take for granted in the United States. For example, it would be nice to see UMBC add automatic sliding doors like Nanzan. However, I am grateful for the convenience that I do not have to commute daily by train.
I learned through Nao that Nanzan had some accessible aspects within their campus such as the automatic doors and braille blocks. I noticed though a smaller elevator, which limits people who require wheelchairs. In comparison to Nanzan, I noticed the elevators here are larger and can accommodate more. I also noticed railings on the side of some pathways at Nanzan and took note that UMBC is a campus centered around on a hill, making it difficult to get around.
For both schools, there are always opportunities to speak about and bring awareness to inclusivity and to stop separating those who have disabilities and to look at the person as a whole.
学生とのフィールド調査を通して
感じられたことを教えてください。
今回関わらせていただいた学生さんの多くは、日ごろ「福祉」や「障害者」とあまり接点がない方がほとんどでした。そのため、私自身どうやってそれらの事柄について話すべきか、関心を持ってもらえるかということに、初めは若干の不安を感じていました。
しかし、初回の授業から皆さんがとても積極的に質問をしてくださり、フィールドワークでは障害当事者でも気付くことのない点にも関心を持たれていたと感じました。
特に印象的だったことは、フィールドワーク中、誘導等のサポートを積極的に皆さんがしてくださったことでした。その関わり方も、とても自然体であり、だからこそ沢山の会話を交わし、意見交換をすることができたのではないかと感じました。
学生の成果発表を聞いて、
感じられたことを教えてください。
今回は主に「車いすの立場」、「視覚障害の立場」という、ある種全く異なるアプローチが必要な視点を軸に作成をしたため、皆さんとてもご苦労されたのではないでしょうか。
しかし発表では、どのグループも異なる立場をしっかり押さえつつ、オリジナリティー溢れる成果物を見せてくれました。特に「障害者等、限定された立場だけではなく、誰にとっても使いやすく、楽しめるもの」を目指されていたことがとても印象的でした。そのため、どの成果物も見ていて楽しい、わくわくする「観光マップ」のようだなと感じました。
現在ではICTをはじめとする技術の進歩により、バリアフリーは以前と比べ格段に進歩しています。しかし、どれだけ技術が発達しても、最終的には人と人とのつながりや、お互いを思いやるという「心のバリアフリー」は欠かすことができないと感じています。今回の取り組みを通し、皆さんからの「心のバリアフリー」を沢山感じることができました。
今年度の連携プロジェクトの意義は
どのような点にあったと感じられますか?
昨年度はどちらかというと、AJU自立の家がノウハウを提供し、学生が実践するというスタイルでした。今年度の、「オーディオマップ」を作成するという取り組みは、AJU自立の家でも実績はなく、試行錯誤でした。そのため、AJU自立の家からは、主にフィールドワークを通して視覚障害者や車いす使用者のニーズを提示し、学生の皆さんの知識と柔軟な発想力を融合することで、カタチにすることができました。
短期間で結果を出すことは容易でなく、失敗の連続の中、学生の皆さんがあきらめずに取り組んで頂いたことに深く感謝します。制作物も、実用性が高いと評価できます。まさしく産学連携において、互いの強みを最大限発揮し、ひとつのものを完成させるという、今後の社会の在り方における先駆的モデルとすることができたと感じております。
参加した学生たちに向けてのメッセージと、
今後さらに期待したいことなどを教えてください。
「ニーズをカタチにする」とは、言葉では簡単ですが、実際やってみると、大変だったと思います。ましてや、参考になる例が無ければなおさらです。今回、学生の皆さんには、障害がある人のニーズや経験をていねいに引き出していただいたと感じます。たとえば、視覚障害のある方が、においや足の裏の感覚を目印にしていることは、私自身も知りませんでした。そういったニーズを、ICT技術の活用や海外大学からの情報収集力の強みを生かし、制作物にできたこと、さらに実用性があるものができたことは高く評価されます。なにより、制作物が障害の無い人にも実用性があるという、ユニバーサルデザインの視点が多く取り入れられている点はたいへんすばらしく感じました。これからのグローバル社会の根底に、この経験が生かされることを期待しています。
このプロジェクトは、例年に比べて、最も難しいものでした。ただ、振り返ると、本当の意味で課題解決を目指す授業だったのではないかと思います。フィールドワークを経て、「本当に音声だけでいいんだろうか?動画のほうが良いのでは?」「秒数を測るよりも、歩数で案内したほうが良いのかもしれない」など、想定していなかった課題が見つかり、学生たちと相談し、授業計画を見直して、それぞれのグループが異なるタイプのオーディオマップを作るということにしました。
最終発表が近づくにつれて、学生たちが発表に間に合うかとても心配になりましたが、その頃には、制作物の仕上がり具合よりも、そこに至るまでに何を考え、工夫し、そして学んだかが大切だと感じていました。学生たちの感想にもあるように、UMBCの学生との意見交換やフィールド調査などを経て、それぞれが多くを学び、考えを深めてくれたようで大変感心しました。また、私たちの社会を少しでも良くしていこうという気持ちをひとつの形で具体的に表現してくれたことに、感謝をしています。今後も、色んな組織や海外ともつながりながら、一緒に社会の課題について考えていけたらと思います。
PBL COIL 今後の展望
LMSの活用
LMS(Learning Management System:学習管理システム)のプラットフォーム上で協定校と南山大学の学生・教員がリアルタイムに情報交換することで、COIL型授業ならではのリアルタイムコミュニケーションをより進めることができます。 今後は、このLMSの活用を広げていく予定です。
ベーシックCOIL、アカデミックCOILとの関連づけ
COIL型授業の別カテゴリーであるベーシックCOIL・アカデミックCOILを、PBL COILと関連づけて学ぶ、ステップアップ型の学習モデルの確立をめざします。
NU-COIL産官学連携への参画について
PBL COILやインターンシップなどNU-COILを通じた本学との連携にご関心のある企業・団体様からのお問合せやご要望などは
下記お問い合せ先メイルアドレスにて承ります。