カトリック文庫 概要
1993年4月、南山大学カトリック文庫は「カトリック大学の図書館として相応しいキリスト教関係資料群を構築することにより、近代日本におけるキリスト教史を研究する国の内外の研究者に資すること」を目的として開設されました。1990年頃より資料の収集を開始、主に明治・大正・昭和初期に成立した聖書、祈祷書、聖歌集、要理書およびそれらの解説書、聖人伝、布教資料、教会・修道会史資料などのキリスト教関係資料(刊行物以外を含む)を所蔵しています。また"カトリック"文庫とはいうものの、所期の目的を達成するために必要な「カトリック以外のキリスト教の教派のもの」、近代のキリスト教に遡ることができれば、プロテスタントはもとより仏教系の排耶書などでも収集対象としています。
開設目的に「研究者に資する」ための資料収集を掲げたのは、提供のための収集であると同時に、保存・保管の観点から資料の散逸を防いで後世に永く残したいという、カトリック大学としての使命ともいえる強い思いがあったためでした。資料収集を本格化させた1990年頃は日本各地の教会が改築の時期に入っており、古い時代の資料が廃棄されようとしていた状況を危惧していたからです。そのため、初期の蔵書は教会、修道会や、カトリック関係機関、信者等の関係者個人からの寄贈資料が圧倒的に多く、開設時の中核を成していました。また、「主に明治・大正・昭和初期」に時代を絞ったのは、資料収集が他大学に比べて後発であり、より古い時代の貴重な資料はすでに他大学で所蔵されている可能性があるため、というのがひとつの理由です。加えて、明治・大正・昭和初期に刊行された洋紙資料は酸性紙の場合が多く劣化しやすいこと、当該時代のキリスト教関係資料には国立国会図書館にも所蔵が無く入手しにくいものが多数あること、などもその理由です。
なお、「研究者に資する」は、研究を生業にする"研究者"のみを想定している訳ではありません。学生や在野の研究者等の学外一般の方々を含めて"研究する者"と捉えています。参考に現在の「資料収集方針」から一部を抜粋しておきますが、ここでは「キリスト教史研究に資する」とその点を明確にしています。
【基本方針】
カトリック大学の図書館に相応しいキリスト教関係資料群を構築し、近代日本におけるキリスト教史研究に資するという「カトリック文庫」の目的の達成のため、「カトリック文庫」の資料収集方針・基準を以下に定める。
- 明治・大正・昭和初期のキリスト教関連資料を収集する。
- 神学書は原則として収集しない。ただし日本のカトリック者による教義等の解説書はこの限りではない。
- 原則として、カトリック文庫内の重複本は認めない。ただし、資料の状態等によりこれを認める場合がある。
【収集する資料】
基本方針に基づき、次の資料を収集する。
- 聖書、祈祷書、聖歌集、要理書、解説書、聖人伝のうち、1868年(明治元年)から1965年(第2バチカン公会議閉会年)までに出版された、主にカトリック関連資料
- 1965年以降の刊行物のうち、近代日本のキリスト教史研究に欠かせない資料
- アジア管区(日本を含む教会管区)への布教に関する海外のカトリック関連資料(出版年を問わない)
- 教会、修道会が出版した史誌、布教誌、教区報、教会報等(出版年を問わない)
- 先に掲げるもの以外で、カトリック文庫の基本方針に沿う資料
また、国内の類似コレクションと比較すると、「(収集する資料)4. 教会、修道会が出版した史誌、布教誌、教区報、教会報等(出版年を問わない)」にも力点を置いている点は当該文庫の特徴だと思われます。近代日本のキリスト教史研究のためには、個々の教会や修道会の資料が必要不可欠ですが、関係者のみに配付されることが多いためか、市場に出回りにくく、入手が困難な事情があります。
図書館には、学習・教育用としてキリスト教コーナーがあり、それとは別に一般研究用としてキリスト教関係図書があり、さらに特殊研究用としてカトリック文庫があります。つまりこれらは、キリスト教分野の蔵書構成を補い合っています。とりわけカトリック文庫は、南山大学のアイデンティティともいえる特色あるコレクションであり、建学の理念やキリスト教の思想に裏打ちされた取り組みとして、カトリック教会や学術界への貢献を念頭に、引き続き適切な資料収集と管理・提供、精力的な関連諸活動に努めたいと考えています。