源平の合戦を描く軍記物語『平家物語』の挿絵入り整版本。

『平家物語』の挿絵入り整版本は、ほかに明暦二年（1656）版・寛文十二年（1672）版・延宝五年（1677）版・元禄十一年（1698）版などがあるが、本書、元禄十二年（1699）版は、そのなかで唯一の横本形態のもの。計50丁以上の挿絵を持つ。

　冒頭に「平家物語作者傳記」「帝王系図」「平家系図」「源氏系図」があり、各巻の目録に各章段ごとの要約文（大意）を記すが、これは同じ挿絵入り横本形態で出版された元禄十年（1697）刊『太平記』や元禄一四年（1701）刊『源平盛衰記』なども同様の形式である。

　「平安城書林　板行」とあって京都で出版されたらしいが具体的な書肆は不明。
南山ライネルス中央図書館のものは第二冊末尾の一丁を欠いている。